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求人広告のライターが、ブラック労働や就活、人材業界周辺のことなど、日常のあれこれをツイーっと書き込んでいるブログです。心に残るヘリクツをお届けします。

ゆとり世代のトリセツ。下から目線のリーダー論。 @高橋みなみの『リーダー論』を読んだ感想

レビュー レビュー-書評

リーダー論 (講談社AKB48新書)

 

もし全ての会社員が高橋みなみの『リーダー論』を読んだら…。

 

入社してすぐに辞めてしまう新人が、多少なりとも減るんじゃなかろうか。

 

そんな感想を持ちました。

 

「リーダー論」は、AKBの総監督として300人の「年頃の女子」をまとめ上げた、高橋みなみさんの実体験からリーダーの役割やあるべき姿が描かれた一冊。

 

一般のビジネス書にも、部下の教育について論じたものやコミュニケーションを指南する内容の書籍は数多ありますが、書かれている内容は似て非なるものです。

 

下敷きとなる理屈、原理原則は共通ですが、リーダーシップをいかに表現・体現するかという手法に違いがあります。

 

本書で高橋みなみさんの体験を通じて語られるのは、ぼく流に言うならば『ゆとり世代のトリセツ』であり『下から目線のリーダー論』。イマドキの若者たちに響くリーダーシップとは何かが噛み砕かれています。

 

 

高橋みなみは、超優秀な中間管理職

高橋みなみさん(以下、たかみな)が初めてリーダー的な立場を意識したのは、会社組織で言えば中間管理職のような状況でのこと。

 

たかみなより年配のメンバーもいるし、年下のメンバーもいる状況。そこでたかみながとった作戦は、まず「嫌われない年下」になること。年上組と年下組の垣根を飛び越えて、自分よりも年上の先輩に話を聞き入れてもらうためには、可愛がってもらうことが大切だと考えます。

 

ダンスを誰より一生懸命練習して、楽屋の掃除も徹底する。日々の凡事を完璧にこなすことで、あの子頑張ってるね、と自然と応援してもらえるような空気を作っていったようです。

 

楽屋入りしたときも、一人ひとりに挨拶に回ったり、同年代の仲間に聞いても分かることでも、あえて年上の人に質問にいったり、、、けっこう泥臭いことをしています。

 

ただ、同時に書かれているのは「媚びたわけではない」ということ。おそらく、媚びてしまうと今度は年下から嫌われてしまうのでしょうね。このバランスを意識して行動することが、中間的な立ち位置にいるものには求められるのです。

 

 

下の人間には、先輩にする以上に気を遣う

たかみなは、普段、あえてヘラヘラしているそうです。気安い空気を自分から出すことで、後輩が話しかけやすい環境を作っています。

 

エセ関西弁をあえて使うことで、「この人はイジッていい人」だと思わせたりもしています。後輩に気を遣わせたらリーダー失格で、むしろ緊張させないように配慮できるのが善きリーダーというわけです。

 

普段の「ゆるさ」があるからこそ、ここ一番で真剣に話し始めたときにメリハリが効いて、メンバーたちの集中力を惹きつけることもできるのですね。

 

あと、これまたできるビジネスパーソンそのものだったりするのですが、新人メンバーの名前までちゃんと覚えておいて、話す時に「○○さん」と、必ず名前を呼ぶこと。できれば出身地や学生時代の部活のことなど、プラスαの情報もインプットしておくことを意識しているそうです。

 

これを、メンバーだけでなく、周囲のあらゆるスタッフにも同じようにしていると聞いて、すげーなと思いました。さらりと書かれていますが、言うは易しでこれって本当に難しい。

 

接する人数が多ければ多いほど大変なのに、それをやってのけるたかみなは本当にすごい。もし、たかみなが就活生だったら、内定をバンバン取りまくるでしょうねー。

 

 

愚痴を言った子の、評価を下げたりしない

たかみなは、愚痴=問題解決のヒントと捉えて、積極的に愚痴を聞きに行く努力をしています。こちらで聞いた愚痴と、あちらで聞いた愚痴を突き合わせることで、うまく人間関係のわだかまりをほどく手伝いもできると語っています。

 

会社でこの話をすると、きっと「なんでそんなことまでしてやらないとダメなんだ。みんな良い大人だろ?」って話になっちゃうと思うんですよ。でも、若い子の心を解きほぐすには、このくらい手間をかけないといけないんだなと感じました。

 

また、仲良しグループにあえて割り込むことで、人間関係の「ダマ」を取り除くことも大切だと語っています。

 

たかみな曰く「あそことあそこがケンカしてる」「あそことあそこは仲がいいんだ」という、勢力図のようなものを思い描きながら楽屋の様子を観察しているそうです。

 

先日読んだ本にも組織がサイロ化(タコ壺化)するのを防ぐことが、組織活性につながると書かれており、それを肌感覚で感じ取って実践しているたかみなの感性の鋭さを感じます。

 

重ねて感心したのは、仮に後輩と話をする必要に迫られたときでも、みんなの前で声をかけずに、メールなどでこっそりコミュニケーションをとること。

 

周囲の注目を集めると、そのメンバーが居心地の悪い思いをしてしまうことにまで配慮しているのです。いやぁ上司の鏡ですね。

 

 

プライドが高く、気分の波が激しい「女子」への接し方

これまで書いたような気遣いで一定の人間関係が気付けると、楽屋に入って挨拶した段階でその日のコンディションが分かるようになるそうです。

 

そして、メンバーの気持ちの変化に気付いたら、「大丈夫?」とすぐに声をかけるのではなく、いまは声をかけて欲しいのか、そっとしておいて欲しいのかを読み解く作業に入るとのこと。

 

まずは周囲のメンバーに探りを入れます。それでも分からなけれど、思い切って声をかけるそうです。「邪魔だよ」と思われてしまう怖さはあるけど、塞ぎこんでいる自分に気付いてもらえたという事実が救いになるはずだと書かれていました。

 

これはまさに、たかみなが普段から築き上げたリレーションのなせる技だと思いますね。

 

会社でよくあるのは、退職願いが出されるくらい手遅れの状況になってはじめて、上司が慌ててコミュニケーションをとりにくパターン。それでは時すでに遅し、なんですよね。

 

この本の怖さは、一面だけを模倣してもまったく効果が得られないどころか、かえってネガティブな結果を生んでしまうことです。理想のリーダーであることの難しさを痛感します。

 

また、たかみなはメンバーが落ち込んでいるときにこそ全力でほめるそうです。普段から自分が感じている、その人の良いところを率直に認めてほめてあげる。

 

現代の若者におきかえると「承認」してあげるわけですね。承認欲求が満たされることで、次への活力が生まれたり、希望が持てたりします。辞めずに踏ん張りがきくわけです。

 

甘い、ですか?

でも、これが現実だと思います。

 

芸能界のクセの強い若者集団だからこうなる、のでは決してなく、イマドキの若者全般に通じる話だと感じました。

 

 

叱るときには、逃げ道をつくっておく

たとえば、若手の子に注意しなければいけないときは、慰め役をちゃんと手配してから叱るようにしているそうです。

 

安全地帯を用意した上で叱る。そして、その叱られた子がどう変わっていくかを後々まで見届けることまで含めて叱ることだと言っています。

 

それ以前に、極力1対1でのお説教はしないようです。女の子はプライドの高い生き物だから、面と向かって一方的に叱っても、なかなか良い結果にはならないとのこと(女の子というか、これは若い世代すべてに適応できる理屈ですね)。

 

だから、1人に言いたいこともチーム全体に向けて発信するそうです。意識は注意したい1人に向けながら、でもチーム全体に、言う。

 

注意が必要であることは、実はたかみなだけでなく、他のメンバーも気づいており不満に思っていることもあるかもしれない。だから、チーム全体に発信することは、間接的な注意にもなるし、不満を感じているメンバーの溜飲を下げることにもつながるのだそうです。

 

そこまでは意識したことなかったけど、この論は的を得ていると思います。なるほどなぁ。

 

 

誰かをほめることは、誰かをほめないことでもある

選抜総選挙でみんなが注目するのは、舞台に立つ選ばれたメンバーたち。

 

ですが、その舞台袖では発表の途中で、落選を確信したメンバーが泣き崩れているそうです。言われてハッとしました。たしかに野次馬のぼくがテレビで注目するのは「誰々が何位」という、選ばれた人たちの話だけです。

 

会社でも売上の達成や何かの表彰など、華々しい成績を上げる社員がいる逆サイドには、必ず選ばれなかった人たちもいるわけで。表彰する側の人間は、賞賛の拍手の一つ一つが胸に突き刺さっているメンバーもいることを肝に命じておかなければいけません。

 

みんなの前で優秀者をほめることは、そうなれなかった人たちを傷つける行為なのかもしれません。

 

ナイーブすぎますか?でも、若い世代をマネジメントするためには、必要な考え方です。リーダーが気に掛けるべきは、うまくいっている人ではなく、うまくいっていない人なのです。

 

 

誰もが前田敦子になれるわけではないが、良きリーダーにはなれる

たかみながリーダー役や総監督という道を切り開いた背景には、前田敦子や大島優子など圧倒的なカリスマの存在と自身の挫折があります。

 

上のほうでも書きましたが、たかみなのやっていることは凡事の徹底です。相手への思いやりを持つことです。もうね、道徳の教科書にしたいくらい。

 

たかみなの気遣いは、ファンへの対応にも表れています。これはぼくが知らないだけで、色んなところで言われているのかもしれませんが、握手会でのエピソードを読んで思いました。

 

たかみなの体調が悪いときに、ファンの一人が手持ちの握手券をぜんぶ使って休憩時間を作ってくれたという話です。

 

その話をここに書いているのが素敵です。だって、この本を読んだらそのときのファンは気付きますよね。これ俺のことだ!って。握手に匹敵するか、ひょっとしたらそれ以上に嬉しいファンサービスじゃないでしょうか。

 

AKBの人気ってこういうことなんだなぁ。

 

 

ぼくがピックアップしたのは、主に書籍の前半部分です。

 

このほかにも「太文字になる言葉を意識しながら話す」など、スピーチの心得について書かれた項目も非常に参考になりました。

 

AKB関連の書籍ということで、興味本位で手にした自分が恥ずかしくなるくらい、気付きのある一冊でした。

 

リーダー論 (講談社AKB48新書)

リーダー論 (講談社AKB48新書)