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相棒の神回に共通すること。

ぼくが毎シーズン楽しみにしているドラマ「相棒」。

警視庁の窓際部署、特命係の杉下右京が難事件を解決する刑事ドラマです。

 

ファンの間では、昔に比べてつまらなくなったと言われることも少なくありませんが、今期の相棒は全体的にクオリティが高いです。

 

ここ最近の放送だと、13話・14話の二部構成だった回は、長編がいまいちな相棒らしく、詰め込み過ぎてグダグダ感のあるクオリティでしたが、

直近の15話、16話、17話は立て続けに神回が続いて、個人的には最終回に向けて気持ちが高まっています。3連続でこのクオリティは過去にもなかった気がします。

 

というわけで、少し感想など書きます。

 

※以下ネタバレ含みます

15話「パスワード」

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(※相棒公式サイトより)

登場人物は、盲目の女性「真奈美」とその恋人「吉田」。そしてヘルパーの「小松崎」。

物語はヘルパーの小松崎が何者かに殺害され、真奈美が疑われるシーンから始まります。

 

しかし実際には小松崎を殺したのは恋人の吉田で、しかも吉田と小松崎は裏で手を組み、何人もの身障者を騙してお金を巻き上げていたのでした。

 

身障者が身内にいる方がどう感じるかは分かりませんが、個人的には障がいを題材にした作品の中では自然に受け入れられる作品でした。

 

細かな心理描写も印象的です。

真奈美が、美容院で髪形がイマイチな気がしたけれど、でも何も言えなかった、という話のときに「私が言ったところで、お前に何がわかるんだ、って感じじゃない」と言っていたのが妙に頭に残っています。

 

障がいのある人は、周りから気を遣われるのがありがたい反面、わずらわしくも申し訳なくもあるという微妙な心情にも共感します。

だからこそ、口喧嘩できるくらい遠慮なく言いたいことが言い合えていたヘルパーの小松崎に、真奈美が惹かれるのにも納得できます。

そしてもともと身障者を騙していた小松崎が、真奈美と接するうちに犯罪から手を引こうとしたのも、ベタながらうんうんと頷ける流れ。

 

最後、真奈美は吉田を殺そうとするのですが、その動機がお金を騙し取られたから、ではなく好きだった小松崎の仇をとろうとしたという構図。

このドラマティックさに胸を打たれます。とても美しい脚本です。

 

最後の点字の縦読みが、ちょっと無理あるものの、感情移入してみている側としては、そんなキザな演出すらも心地よいレトリックだと感じました。

 

16話「ギフト」

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 (※相棒公式サイトより)

season14 で逮捕された快楽殺人犯「北一幸」が再登場。

北一幸は、美しい女性の顔面を切り刻んで殺害することに悦びを覚えるシリアルキラー。

その北一幸が治療中の病院から見張りの巡査「塩崎」を殺害して逃亡。

病院のシステムがダウンし停電した隙の犯行であったことから、共犯者の存在が疑われていた。

そんな導入のストーリー。

 

共犯者は、なんと最初に殺害された塩崎巡査だったというオチ。

見張り見張られる関係のなかで、塩崎と北一幸は話をするようになり、あるとき塩崎は、自身が同性愛者でそれを理由に周囲から酷い扱いを受けたことを打ち明けます。

そして2人は、逃亡と塩崎に酷い扱いをした者たちへの復讐の計画を練ることに。

 

このシナリオの興味深いのは「同性愛者をいじめる一般人」を被害者に設定することで、本来、極悪人のはずの北一幸の犯行に、視聴者を共感させようとしている点です。

塩崎をいじめるシーンの回想演出をうまく間に挟み込むことで、こんな奴らは殺されて当然、と思わせることに見事に成功しています。

実際、北一幸が最後の一人を殺す直前で、杉下さんに犯行を止められてしまったとき、ぼくは残念に感じてしまいました。

 

最後に杉下さんが、北一幸に塩崎巡査の死について言及します。

「塩崎巡査は自ら毒を飲んでいた。あなたが殺す必要はなかったはずです。ましてや顔を切り刻むことに合理性はない」

 

北一幸は、なぜ塩崎の顔を切り刻んだのか。

その理由は、彼にとって顔を切り刻むことは、その者を美しい女性だと認めることになるから。北一幸なりの塩崎に対する敬意の表し方だったというのです。なんて結末だ。

 

歪んだ思想が理路整然と語られてゆく様に、頭がクラクラしました。

すべてはこの結論に導くための布石だったとは…お見事です。

 

17話「ラストワーク」

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  (※相棒公式サイトより)

YouTuberの男、ハンドルネーム「スガチー1888」が投稿したラストワークという動画が話題になっていた。

動画には、暗い部屋に軟禁され、拳銃で脅される初老の男性の姿が映っていた。

こんな導入。

 

世間が本物だと騒ぎ始めたこの動画。

実は初老の男性とスガチーによる自作自演の作り物なんですね。

 

初老の男性は現在はホームレスをしていますが、若かりし頃は映画監督を志しており、偶然出会ったスガチーに入れ知恵することで、自らの作品を世に送り出そうとしたのでした。

 

ところが、事態は急転。

初老の男性が、配信した動画のとおりに、湖で死体となって発見されてしまいます。

 

入り組んだ人間模様が興味深い作品でした。

まず、スガチーは単なる作り物のオモシロ動画だと思って撮影していたけれど、初老の男性にとっては、若かりし頃の夢の焼き直しであり、いまは疎遠になっている娘に対するメッセージでもあるという認識のズレがあります。

 

さらには、動画に注目を集めさせるために、スガチーのあずかり知らぬところで、初老男性が自ら命を絶って「本当の事件」にしてしまうという覚悟の重さ。

撮影の合間に回していたカメラにおさめられていた、今は離れて暮らす娘に対する男性の真摯な想い。

 

スガチーは軽い気持ちで動画を撮影公開していたし、途中に出てくる娘は、家族を捨てた男性のことを疎んじていました。

 

このように、見事なまでに各人の想いがてんでバラバラだったのですが、それが杉下警部によって紐解かれ、一本の線につなぎ合わされてゆく様は、見ていて爽快でした。

 

救いのないような、救われたような心地。

珍しく悪人が一人も出てこない、静かで温かなエンディングに心打たれました。

 

相棒の神回に共通する要素

ひょっとしたら物語全般に言えることかもしれませんが、脚本がシンプルだということです。

必要以上に人間関係が複雑でなく、物語を通じて表現したいテーマが明確。

小説で言うところの読後感を、あらかじめ明確に定めて筆が進められている印象を持ちます。

 

一方で、グズグズになって中だるみする回は、共感が置き去りにされており、物語の整合性さえ合っていればよしとされているような印象を持ちます。

わざわざドラマにするまでもない「つまんない普通の事件」という感じなのです。あるいは、無理に社会問題を提起しようとして失敗しているような…。

 

たとえば最初に中だるみと書いた13話・14話の2部構成の回は、クラウドソーシングの闇を表現したいのか、警察官僚の人間性批判をしたいのか、はたまた母子家庭や親権問題について表現したかったのか。

 

2話ぶんの尺があるとはいえ、要素を詰め込み過ぎてシナリオが複雑化してしまっていました。それ故に、スピード感とドラマ性を損なってしまっていたのだと感じます。

 

2時間ものになると、途端に話が回りくどくなるのが相棒シリーズの悪い癖。

果たして最終回のスペシャルはどうなるのでしょうねぇ…。

不安ながらも楽しみが勝ります。

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