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人材業界で働いています。ブラック労働や就活、人材業界周辺のことなど、日常のあれこれを書いています。

相棒 season16 感想まとめ|1~12話

毎年楽しみにしている相棒。

今シーズンは備忘の意味もこめて、毎話感想を書いていこうと思います。

ネタバレ無視して書きますので、未視聴の方はご注意ください。

12話「暗数」感想|相棒 season16

筒井真理子|相棒16

第12話「暗数」|相棒 season16|テレビ朝日

 

風刺として、とてもよく練られていると思いました。

ただ、脚本としてはあまりにパズルのピースがかみ合い過ぎていて、ちょっとご都合主義に感じる部分もあったかなぁ。

でも、それを差し引いてもメッセージとしては面白い回だったと思います。

 

家政婦さんの娘が性暴力を受けて自殺していただけでなく、衣笠氏の奥さんにも性暴力を受けた過去があり――、これ見よがしに提示される「暗数」というキーワード。

表沙汰にならない性暴力が世の中にあることが、直接的に語られます。

終盤はドラマと言うより、ほとんど啓蒙に近い演出が続いた印象です。

 

そして最後。

性暴力を訴えた被害者の捜査打ち切りを命じた衣笠と、杉下さんの会話。

 

杉下:「あなたの指示は結果的に、勇気を出して告訴した被害者を追い詰め、同じような被害にあいながら声を出すことができない、多くの人たちを深く傷つけることになりました」

 

衣笠:「組織の人間として、私は間違った行動はとっていない」

 

杉下:「おっしゃる通りです。あなたを裁く法はありません。あなたの良心以外には」

 

衣笠と杉下さんのやりとりを際立たせるために、このシーンの直前に、逮捕されたカルト教団の人間の取り調べ風景が差し込まれていました。

 

犯人と伊丹刑事とのやりとりが、いかにも計算通りと言いますか、狙い過ぎと言いますか。これを言わんがためにカルト教団が今回、必要だったんでしょうね…。

 

犯人:「洗脳されているのはあなたたちです。警察に本当の正義があると思いますか?」

 

伊丹:「刑事だからなぁ。俺たちは」

 

カルト教団は、教義のために人殺しをするかもしれません。

でも、警察だって組織の論理や上からの命令で、結果的に人を殺すような決断をとります。衣笠氏がそうしたように。

 

警察とカルト教団。両者にそれほど差はないのでは?

警察組織は、とても危ういのでは?

という強烈な皮肉が込められています。

 

現実世界でも、性被害を告白する「#Metoo」がムーブメントになっています。

性被害を野放しにしている警察組織の腐敗を、大上段から切り伏せる社会派の相棒。

今シーズンはこの手の風刺シナリオが控え目だっただけに、ファンとしてはようやく来たか!という感じの回でした。

 

11話「ダメージグッズ」感想|相棒 season16

真野恵里菜|相棒16

第11話「ダメージグッズ」|相棒 season16|テレビ朝日

 

陣川君がロンドンから帰還。

現地で知り合った女性(咲・真野恵里菜)を杉下と冠城に紹介します。

咲は親友の自殺について疑問を持っていることを相談し、いつものごとく特命係が捜査を始めます。

 

個人的には好きだなぁこの回。

児童相談所で育った少女4人が、4者4様の人生を歩んでいるんですね。

自殺した真理は風俗嬢になっており、一人はDV夫にすがりながら生きており、咲は薬物依存の生活をおくっており、成澤良子は自分のような子供を救いたいという志を胸に議員になっています。

 

少女たちが学生時代に売春をしていた過去も明らかになりますが、成澤議員が職を追われない結末になった点に、今回のシナリオに込められたメッセージ性を感じました。

 

議員にとって売春の過去はタブー。売春の過去をネタに恐喝してきた麻里の自殺を止められなかった(消極的に自殺に加担したともいえる)成澤議員の行動を、杉下警部は咎めます。

しかし、結果的に成澤議員に直接的な罪はなく、議員を辞職することはありません。議員として、子どもを支援するための活動を続けます。

そしてエピローグでは、咲が薬物依存から立ち直ろうと更生施設で療養する様子も描かれます。

 

4人の生きざまが対照的に描かれていたのが印象的です。

「リセットしたい」が口癖の真理は、結果的に自殺してしまいました。

しかし、あとの3人は過去を受け入れながら今を生きています。

その3人の現在の状況にも大きな格差のあることは皮肉であり、訴えかけてくるものがありました。

 

最後に咲が、感謝の形として、杉下たちにダメージグッズ(ビンテージっぽいネクタイピン)を贈ります。

 

咲:「3人ともきっちりキメてるけど、少しは外してもいいんじゃないかなと思って」

杉下:「ダメージグッズには味わい深いものがありますからねぇ」

 

ここでの「ダメージ=人生における失敗(汚点)」という意味なのでしょうね。

 

失敗を経験した人の人生には、味わいがある。

あるいはその失敗や汚点を、自分がどう捉えるかで人生の意味は変えることができる。

ダメージと思うか、味があると思うか。

 

ハッピーエンドとまでは言えませんが、未来にささやかな希望を残した余韻ある幕引きが素敵でした。

 

あと真野恵里菜がかっこいい役者さんになってて驚きました。SPECでサトリ役だった頃から隔世の感があります。痩せてキリっとした感じも。上の写真にある着こなし、めっちゃ好きだわ。

 

10話「サクラ」感想|相棒 season16

犯人|相棒16

第10話「サクラ」|相棒 season16|テレビ朝日

 

安定の太田脚本。見応えのある正月SPでした。

早い段階で敵が内にいることが明示されたのが有難かったです。推理の思考を止め、純粋にドラマとしてのめり込んでいくことができました。

 

途中に出てくる「QTES689」の読み解き方はある種お粗末なのですが、考えたのは高校生で、しかもパソコンに馴染みのある3人であることを思えば納得。

ただ、内閣情報調査室の安田たちが気付けないのはちょっとなぁ。

 

あと、八代課長の秘密を明らかにされることが、どうして冠城にとって脅しになり得ると安田たちは思い至ったのでしょうね。過去の回で説明があったことを、僕が忘れているのか見落としているのか…。

それともシーズン16最終回に向けての布石だったりするのでしょうか。

 

ところで今回は、珍しく悪役が、わかりやすく悪役でした。

相棒の傾向として、普段は犯人に対してグレーっぽい人物造形をすると思うのですが、今回の有馬氏の思想の歪み方は相当酷かった。安田もずっと憎たらしい表情で、極悪人のように描かれていたし…。

 

最後、上条君が結局、逮捕されてしまうことも、有馬氏が「撃ってみろ、腰抜け」と上条君を煽るのも、視聴者のヘイトを意図的に集めんがためのレトリックに感じられました。

 

犯人の悪人描写の(普段と比べての)過剰さが、政治信条を視聴者に浸透させんがためのプロパガンダのように感じて、ドラマとしては面白かったのですが、少しモヤモヤしてしまいました。

 

9話「目撃しない女」感想|相棒 season16

朝倉あき|相棒16

第9話「目撃しない女」|相棒 season16|テレビ朝日

 

今回の相棒は非常に珍しいパターンでした。

最初から犯人がほぼ確定しているという展開です。

 

犯人を目撃したのは写真の女性、キッチンカーでタコライス販売を行う芽依さん(朝倉あき)です。

目撃者がいれば、あっさり事件は解決しそうなものですが、彼女は相貌失認という顔が識別できない障害を抱えており、事件後に犯人に出くわしても気づくことができません。

 

犯人は地面師と呼ばれる不動産詐欺を行うグループで、殺されたスナックのマスターもその一味だったという設定。事件としては何の捻りもない非常にチープな結末でした。

 

ただ、僕は今回のシナリオ、嫌いじゃないなぁ。

芽依さんの、相手の顔を覚えてなくて、ばつが悪そうな申し訳なさそうな表情とか、杉下さんに後ろから声をかけられてビクッと驚く仕草とか。

不器用なんだけど仕事熱心な芽依さんの姿が、朝ドラ的な感じで、つい見入ってしまうんですね。危なっかしくて気になると言いますか。

 

おまけに、そんな彼女が目撃者として犯人につけ狙われているもんだから、どうなっちゃうんだろう大丈夫だろうかとハラハラさせられて、それだけで1時間見れてしまいました。

刑事ドラマであることを忘れちゃってましたね。

相棒がまさか「萌え」という新境地に踏み込んでくるとはなぁ。

これは予想外でした。

 

 

 

8話「ドグマ」感想|相棒 season16

杉下と冠城|相棒16

第8話「ドグマ」|相棒 season16|テレビ朝日

 

今回の話、個人的にはかなりツボでした。

正義のあり方について描かれたシナリオです。

 

今回の事件の被害者は加害者でもあります。私欲のために兵器販売に加担し、アジアの現地民を紛争に巻き込み死亡させた悪人たちです。

 

犯人の嗣永(ツグナガ)は、警視庁の外事課に務める人間です。

彼は外事課のエージェントとしてアジアに潜伏中に、被害者となった彼らの悪事を目の当たりにします。

嗣永は法にのっとって彼らの悪事を捜査し、逮捕しようとしますが、兵器販売には日本国家も関与しており、警視庁の上層部から圧力がかかり捜査中止に追い込まれます。

 

そこで嗣永は、警察の正義で裁けない罪ならば、自らの信ずる別の正義によって悪人を断罪しようと考えたわけです。正義感の強さゆえの暴走でした。

 

一方「正義感の強さゆえに暴走」と言えば思い浮かぶのは、杉下警部です。

クライマックスでは、その杉下警部の信じる正義と嗣永が信じる正義のコントラストが鮮やかに浮かび上がります。

 

嗣永:「警察の正義だけが正義ではない。この世界には正義は複数存在する。」

杉下:「僕は、暴力による正義を認めません」

 

嗣永:「あなたなら理解できるはずだ。私の正義を。」

杉下:「それはできません。なぜできないか…、あなたなら理解できるはずです」

 

シビれる展開です。

決して相容れないけれど、共通項があることはお互いに認めている。そんな関係だからこそ成り立つ会話です。

警察官と犯罪者は、必ずしも「正義vs悪」の関係とは限らないんですね。正義の在り方が紙一重すれ違うだけで、正義の人が殺人者になり得る危うさが描かれます。

 

そしてラスト。

犯人の取り出した二丁拳銃を前に、杉下と冠城は動きを封じられます。

ここからが最高でした。

 

嗣永:「動くな。ゆっくり銃を出して、こちらに投げろ。」

冠城:「ご安心を。拳銃は持たないことにしたんでね。」

   「拳銃は所持しない。それが特命係のドグマですよね。」

杉下:「ええ」

 

杉下:「暴走したとはいえ、あなたは正義の人です。」

   「丸腰で法の遵守を説く警察官二人を、保身のために殺せますか。」

   「どちらでも構いませんよ。ご自分の正義に従ってください。」

 

嗣永:「正義に……従います」

 

拳銃を突きつけられた、絶体絶命の状況からどう逆転するのか。

その解がこれですよ。オシャレにもほどがあります。

 

ブルブル震えたり、声を荒げたりする杉下さんも良いんですが、今回のように言葉の刃で静かに切り結ぶ展開も見ごたえがありました。

 

以前までのシーズンで、ときに杉下さんの潔癖すぎる正義が狂人じみて見えることもあったのですが、今回の件で、杉下さんの印象がニュートラルよりに戻った感じはしますね。

今後の展開にも影響してくるのでしょうか。楽しみです。

 

7話「倫敦からの客人」感想|相棒 season16

伊武雅刀

第7話「倫敦からの客人」|相棒 season16|テレビ朝日

 

冒頭、派遣社員の男性が殺害され、現場付近で見つかったスマートフォンから犯人らしき男性が映った動画が見つかります。そしてアクセス履歴にはダークウェブと言われる裏サイトにアクセスした形跡が…。

 

実にそそられる導入でした。

ただ、結末に近づくにしたがってシナリオに違和感が…。

 

被害者は死の直前、真犯人が息子であることに気が付き、息子を庇うために事件のキーとなったスマートフォンを隠ぺいしようと画策。

その行為が警察の捜査をかく乱し、事件の真相を見えづらくしていたのです。

 

「真犯人」と真犯人に踊らされて悪事に手を染めた「刑事」と真犯人を庇う「父親」と、そこにダークウェブを使って商売する「男(被害者の一人)」、この4人の思惑がすれ違うことで、複雑怪奇な事件が成立していたというオチです。

 

色んな人の想いが折り重なって一本の事件の線につながっていく。なんだか内田康夫サスペンスのような展開でした。

しかし相棒は2時間サスペンスではなく、1時間の番組です。これだけの要素が入り混じると、やや駆け足に感じてしまうのは致し方ありませんね。

 

描写不足でロジックが甘い部分は、ダークウェブという架空の仕組みを利用して、適当にはぐらかそうとしていた気がしてなりません。

真犯人がダークウェブの管理人ならまだしも、いち利用者にも関わらず軽々とサイト利用者をハッキングできる設定は流石に無茶だし、伊武雅刀が堂々と一般非公開のダークウェブにアクセスするシーンも、ミスリーディングを狙うにしてはやり方が雑すぎる気が(汗)

 

全体的に穴の目立つ7話ですが、杉下さんと元相棒とのかけあいは手に汗握りましたね。

杉下右京がシャーロックホームズだとすれば、かつての相棒(伊武雅刀)は、モリアーティ教授のようでした。今後の二人の対決が楽しみです。

 

 

 

6話「ジョーカー」感想|相棒 season16

早見に質問する杉下と冠城

第6話「ジョーカー」|相棒 season16|テレビ朝日

 

事件の発端にもなっているのですが、妻の職業がデータサイエンティストという設定で旬のネタを利かせていたし、

警視庁内部の権力争いの伏線もしっかり盛り込んであったし、

大河内監察官のラムネいじりも入れてきてたしw

杉下さんも最後にブルブルしてたしw

 

とにかく「相棒的な要素」が盛りだくさんな回でした。

事件のほうも要素盛りだくさんで、登場人物が多く利害が複雑に絡み合う展開。

 

これだけてんこ盛りになっていると、普段の相棒なら、もっとゴチャついて破綻してそうなものですが、今回はわりと普通に見れました。なぜだろう。場面転換が少なく、長尺の語りが多い脚本になっていたから、でしょうか??

あるいは裁判の流れにそって事件が語られていく仕立てだったために、時系列が単純明快だったからかもしれません。

 

さすがに若干の説明臭さは感じてしまいましたが、謎が解き明かされていく過程はそれなりに楽しめました。ただし、説明臭さがあだとなり感情移入度は低めでしたね…。

これは相棒あるあるだけど、感情移入度が低いときに杉下さんがブルブルしながら犯人に説教してるのを見ても、ぜんぜん心に響かないんだよなぁ。

 

ただまぁ今回のシナリオは、そもそも感動するような展開が意図されていなかった気もするので、これはこれという感じですね。

 

最後に冠城の問いかけに、杉下さんが答える場面。

「言った通り残酷な結末でしたね」

「それでも良かったと思いますよ。どれほど残酷な結末であろうと、真実を知らない限り、早見さんは前に進めなかったでしょうからね」

 

とあるように、救いようのない絶望的な結末こそが、本シナリオの最大の見どころなわけです。

事件は完全に解決しているにも関わらず感じる、このやり場のない消化不良感。

ある意味で相棒らしいといえばらしい、メッセージ性を孕んだ回でした。

 

※驚いたのは、これ↓の5話と同じ脚本家さん(浜田秀哉さん)だったこと。

同じ人が書いたとは思えないくらい味付けの仕方が違う印象を受けました。

 

5話「手巾(ハンケチ)」感想|相棒 season16

警察官役の南沢奈央

第5話「手巾(ハンケチ)」|相棒 season16|テレビ朝日

 

いつも警察の不祥事ばかり描いているから、たまには警察をヨイショしておくか、という意図で作られた警察へのサービス回でした(笑)

という冗談はさておき。

 

警察官学校で起きた転落事故と23年前に起きた事件とのつながり。

そして、転落事故の被害者である樋口教官とその娘で警察官である真紀(南沢奈央)との関係。両者の関連が事件解決の糸口になっていくという展開。

 

今回は犯人の姿がほとんど出てこないんですね。事件の顛末自体は、とてもあっさりと説明されています。一方で、色濃く描写されているのが樋口教官と娘である真紀との関係。

真紀の父への想いが、タイトルにもなっている「ハンケチ」という小道具を通じて、象徴的に描かれます。

 

今回のシナリオはドラマ性を強調するために、意図的に犯人捜しの優先度が低く書かれていたのが特徴的でした。

途中、真紀が樋口を突き落とした容疑者候補に挙げられるのですが、父の話をしながらハンカチを握りしめる真紀を見た杉下さんは、芥川龍之介の短編「手巾」を引き合いに出しながら、

 

「彼女はハンカチを、ちぎれんばかりに握りしめていました。――もし彼女が突き落とした犯人ならば、娘としてあえて悲しむふりをするでしょう。机の下でハンカチを握りしめたりはしませんよ。」

と、珍しく抒情的な推理を披露。真紀に対して、いとも簡単に「シロ判定」をくだします。

 

怪しい人物は、いつもなら最後まで容疑者候補としてストックしておくのが常なのですが、あえてそうしていません。おそらく視聴者に、怪しむことなく安心して真紀の心情に共感してもらうためなのでしょう。

目論見はうまく成功していたと感じます。最悪の結末が回避され、僕は肩の荷がおりた心地がしました。

おかげさまで、以降はリラックスモードで視聴。父と娘の不器用な親子愛。心温まるストーリーを堪能できました。

 

真犯人は警察学校の生徒であり、23年前に樋口教官が逮捕できなかった犯人の息子であるという結末。

 

病床の樋口に、真紀は語りかけます。

 

「あなたが断ち切ることのできなかった犯罪によって、今回また、命を落とした人がいる。――あなたは教官失格です」。

 

父親の教官への復帰に、引導を渡す真紀。厳しい言葉を投げかけながらも、ちぎれんばかりに握りしめられるハンカチ。

それは罪悪感を感じながら教官を続ける苦しみから、父親を解放せんがために出た、厳しくも愛情あふれる言葉です。

 

教官としてあえて厳しい言葉を生徒に送り続けてきた樋口と、父を思う故に厳しい言葉を投げかけた娘の真紀。

親子の会話を通じて、教官の志が未来に引き継がれていくことが暗示されます。

派手さはありませんが、静かに心に染み入る回でした。

 

 

 

4話「ケンちゃん」感想|相棒 season16

コンビニ店員役の西井幸人

第4話「ケンちゃん」|相棒 season16|テレビ朝日

 

冒頭。コンビニでアルバイトする森山健次郎(西井幸人・写真右)が殺害されます。手にはダイイングメッセージと思わしき「中」の文字。

 

久々にミステリ風味の相棒が見られると期待したところが、ふたを開けてみるとダメな相棒のテンプレにぴたりとハマる、ハズレ回でした。

こんなに酷い回はいつ以来だろう。ちょっと記憶にないくらい酷い。相棒史に残るダメ回と言っても過言ではありません。

 

ストーリーというのは、複雑にすればいいってもんじゃないと思うのですよ。

今作では、これだけの要素が矢継ぎ早に登場します。

 

  • 森山が実はサヴァン症候群で数学の天才であるという設定。
  • 森山がもぐりで講義を受けていた大学の教授。
  • 森山の兄は企業経営者。
  • その企業に勤める女性に森山は恋をしていたが、フラれてしまう。
  • 一方、その女性と兄は恋人関係である。
  • 森山は殺される数ヶ月前、印刷所に勤めていた。
  • 杉下警部は印刷所の聞き込み時に、大学の入学案内を見かける。

 

これだけの伏線を張り巡らした結果が何かといえば、

 

  • 教授のアシスタントを務めていた講師が、不正入試の手引きをしており
  • 講師が森山の兄にブローカーを名乗り、森山に入試問題を盗ませようとした
  • しかし森山は良心がとがめ、盗んだ問題をわたすことを拒む
  • 森山の兄から入試問題を入手できなかったと連絡を受けた講師(ブローカー)は、殺害現場となったボーリング跡地に森山を呼び出し、問題を教えるよう迫る
  • その場で、森山は問題をノートに書き写し解こうとするが、実は問題に欠陥があることが判明。混乱した森山は手のひらに「∅」の字を書く。
  • 問題の間違いを指摘する森山。講師は問題の欠陥に気づけず、そのことが講師のプライドを傷つけ、逆上した講師は森山を殺害。
  • 講師の不正入試関与の動機は、自分の力が認められず何年も助教授にもなれず講師に甘んじていたこと
  • 一方、兄は兄で、見下していた弟の思わぬ才能に嫉妬し、恋人を略奪し、森山に犯罪の片棒を担がせることで、森山の数学者になる夢を閉ざそうとした。

 

複雑なばかりで、味わいのない結末です…。

 

ダメな回の相棒は、毎回決まってテーマがブレてるんですよね。

今回で言えば、

 

「大学講師の劣悪待遇という社会問題」

「承認欲求をめぐる人間の業」

「ある日、突然に才能に目覚めた者を取り巻く周囲の変化」

 

各テーマごとに1話作れそうな大問題が、同時に3つも登場しています。

 

60分の短時間で要素が多すぎるがゆえに、設定を都合よく糊付けしたような展開にしかできないのです。

一見すると、整合性はとれているように見えますが、そもそも講師が問題を盗む手段として、わざわざ森山君を使うことに、このシナリオの致命的な欠陥があるんです。

 

大学の講師なんだから、給与の安さを理由に入試問題を盗むなら、もっと簡単に盗む方法はあったはずです。わざわざまわりくどい手段をとりすぎです。

森山君への嫉妬ゆえに講師が森山君を"あえて"利用しようとしたにしても、今度は、森山君の兄が会社経営に行き詰ってお金を必要としてることを、講師がなぜ知ることができたのか不明です。

設定を複雑にしすぎたがゆえに矛盾が生じています。

 

さらに兄の銀行口座に、そこいらのATMからお金を振り込むなんてのも、あまりに不用心で間抜けです。最初から捕まる覚悟の犯行に思えます。が、一方で殺人自体はその場の衝動的なものという…。

兄は兄で、弟に嫉妬して犯罪行為を強要したり、意中の女性を略奪したりするし…。で、これがブラフとしての伏線回収になっているという…。

 

もうめちゃくちゃです。

話の整合性をとるために人の感情が捻じ曲げられており、その捻じ曲がった感情を最後に、

「兄弟というものは時として、本人たちにしか分からない、複雑な感情をもたらすものなのかもしれません(by杉下)」

とかいって、名ゼリフ調でまとめられても、納得感がまったくない!

 

 

兄弟間の嫉妬という要素をまるっと取っ払って、「大学講師の待遇の低さ」と、

「才能を持ちながらフリーターに身をやつしていた若者(ある日、才能に目覚めた若者)」の2軸にしぼって物語を整理し直せば、良作以上の脚本になっていた予感がします。

 

なぜなら、

講師⇒ある程度、機会に恵まれ順調に階段をあがってきたが、途中で挫折した人

森山⇒ずっと取り柄のない人間として人生を過ごしてきたが、ある日、才能に目覚めた

というキレイな対比が成立するので、描き方如何では両者が際立つ可能性があるからです。

ま、机上論なので実際に脚本を書くとなれば、そんなに簡単にはいかないと思うんですけどね。でも、素人目にはとても惜しい回に思えます。今回のシナリオは、物語に登場した講師の人生のようです。

間違いのもとは、ちょっとしたボタンのかけ違えです。でも、少しの狂いが明暗をくっきり分けてしまいました…。

 

3話「銀婚式」感想|相棒 season16

地味ながら味わい深い回でした。

脚本が太田愛さんの回は、個人的に嗜好が合うなぁと感じています。

 

銀婚式をひかえた夫婦(川野太郎と菊池桃子)。

菊池桃子が資産家の令嬢で、川野太郎が婿養子という設定。

川野太郎と菊池桃子

第3話「銀婚式」|相棒 season16|テレビ朝日

 

大筋だけ見れば、夫婦仲に不和があり妻が夫を殺害した、というだけのよくある構図なのですが、なぜ殺人に至ったのか、その動機についてひとひねりあるのがミソでした。

 

妻は、夫の不倫に気づきます。事故死に見せかけて殺害するために、車椅子に夫が細工したことも知ります。夫の殺意にも気づきました。

でも、犯行に及んだ動機はそのいずれでもありません。

 

夫が車椅子に細工したことを知ったときに、25年前、自分が半身不随になるきっかけとなった落馬事故にも夫の作為があったことを悟ってしまったことが、犯行の引き金となりました。

 

最後の杉下さんと犯人のやりとり。

杉下:「タクミさん(夫)の殺意に気づいたとき、なぜ話してくれなかったのですか。あのときに話してくれていれば、その後のすべてが変わっていたはずです」

犯人:「私は自分が何をしたのかわかっています。愚かだと思われるでしょうが、25年間、ずっと信じてきた愛情を、法律で裁いて欲しくなかったんです」

 

人間の感情の複雑さが見事に描かれた脚本にうならされました。

不倫は現在のもので、車椅子への細工も現在のものです。

でも、25年間の落馬の件だけは許せなかった。もしも落馬の原因が夫の故意によるものであったとしたら、自分が信じてきた25年間の結婚生活や夫への想いすらも偽物になってしまうから…というわけです。

 

最後、ちょっとだけ苦言も書いておきますと、車椅子の力で男性が転落するほどにラグを引っ張れるのかとか、転落したから死ぬわけじゃないぞとか、そんな簡単にタイミングよく眠らせる薬って何だよ?とか、(不倫を知るきっかけになった)インターフォンの映像はそんなに長時間見れないんじゃないの?とか。

事件を成立させるためのギミックは、ことごとく粗いんですよね。

 

ミステリ要素を重視する人には、目を覆いたくなるような部分も多々ありましたが、人間ドラマ重視の僕にとっては満足の第三話でした。

 

 

1話「検察捜査」・2話「検察捜査~反撃」感想|相棒 season16

前編・後編になっていた1話・2話。相棒のスペシャルは駄作率が高い、というジンクスを初回から打破してくれたのは嬉しいですね。安心して見られる内容でした。

 

ただ、個人的には初回スペシャルにして欲しくなかった内容です。

これは毎度のことですが、相棒のスペシャル版は単なる事件捜査のシナリオじゃないんですね。事件と並行して警視庁内の権力争いや陰謀の線も走るのが慣例となっています。

 

今回、僕にはその陰謀の線がとても邪魔に感じました。

というのも事件の方のシナリオがなかなか味わい深かったんです。そっちをメインで重点的に描いてもらいたかったと思ってしまいました。

 

歪んだ嗜好をもつ犯人(中村俊介)は、事故に見せかけてこれまでに「妻」を3人殺害しているのですが、3人目の殺害に関する証言だけが、どうもはっきりしないという筋書きでドラマが進んでいきます。

ところが終わってみれば、1人目・2人目は計画殺人であったが、3人目は突発的な事故であった、というあっさりした結末。なんだかいつもの相棒らしくありません。 

 

僕は、お目付け役の顧問弁護士(中村ゆり)が、3人目の殺害に深く関与している、なんなら真犯人だ!くらいの期待をしながら見ていました。

中村ゆり|相棒16

第2話「検察捜査~反撃」|相棒 season16|テレビ朝日

 

犯人が彼女を庇うような格好で、3番目の事件が発生(もしくは露呈)してしまう、という人間臭い展開に期待していたのですが……。

 

今回は、警視庁内の権謀術数めぐらす権力争いを描く方にかなりの尺が割かれており、事件捜査はダイジェスト的な扱いでした。まぁこれはこれで、いつもより展開がよく整理されていて良くできた話だとは思ったんですけどねー。

 

相棒のどの部分に面白みを感じているか、によって評価が分かれる初回スペシャル前後編でした。

僕は犯人を取り巻くヒューマンドラマが好きで見ている派なので、事件がオマケ扱いされている今回の展開には、少し物足りなさを感じてしまいました。

 

 

★以降も加筆していきます。

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